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by 鷺萌彩
その午後。
わたしは、ホテルのラナイから、海を眺めていた。 PM6:00。 カピオラニ公園に面したホテルの12階。 熱い太陽が、今日最後の陽差しであたりをオレンジ色に染めていた。 サンセットクルージングのフェリーがそろそろ、出航の準備をする頃。 真下には、ホテルのプールが青い水面を風にゆらせている。 ビーチベッドに寝ていた観光客は、タオルを抱えて、 部屋に戻る準備をしている。 左手の向こう、夕日を受けたダイアモンドヘッドが、 すこし、眩しそうに見えた。 わたしは、レンタルしている車でドライブに出かけることにした。 夕暮れの風が柔らかく、わたしの前髪をフワリとゆらして過ぎる。 そんな気分になる、午後だった。 いつものように、ホテルの駐車場に降りる。 駐車場係の、サンディー(1週間の滞在で、顔見知りになっていた)は 今日も、相変わらず、長い脚をテーブルに乗せて、 チューイングガムを噛んでいる。日本では考えられない・・ 彼女に好感を持ったのは、そんな飾らないところだった。 突っ張ってるわけでもない。 行儀が悪いわけでもない。 ほんとに、自然に、そうしたスタイルでそこに座っている。 そんな、彼女の姿は、とてもステキに見えた。 わたしの姿を見つけると、彼女は「ハーイ」と一言。 そして、屈託のない笑顔を見せた。 まるで、ハイビスカスの花が、ぱっと開いたような。 そんな、明るい笑顔。 どうして、こんな、笑顔が出来るのか。 いつも、不思議な気持になる。 きっと、心からそう笑っているからなんだろうな。と思う。 日本にもあるけれど、マクドナルドのプライスボード。 スマイル=0円の表示。 そんな、無償の、なんのかけひきもない、 笑顔が出来たらいいなと思う。 自分の車に向かう。 FORDのコンバーチブル。 多分、観光客向けに用意された、その車は1800CCのコンパクトサイズ。 スカイブルーの車体に、黒の幌。 わたしは、幌を開け放って、車をカピオラニ・アベニューに乗り入れる。 ハワイでは、車の屋根なんて必要ない。 風を、体に感じてぐいぐいと走る。 シャワーを浴びたばかりの髪が、乾いた風にブローされていく。 途中でフリーウエイに入る。 アロハスタジアムの横を通り過ぎて、 パールハーバーを眺めながら、快適にドライブする。 ラジオのチューニングはKIKI。 アップテンポのロックのリズムに乗って、 アクセルを踏む。 フリーウエイを降りて、米軍基地を通り過ぎる。 やがて、チャイナタウンの摩天楼が輝き出す。 ラジオから、スローバラードが流れ始める。 イーグルスのデスペラード。 信号待ち、隣に泊まったコンバーチブルから、 黒人の男の子が手を振ってくる。 わたしも、ニッコリと微笑んで、手を振り返す。 サンディーみたいな笑顔が出来たかしら。 いつも、自然体でいたいと思う。 海のようにたおやかに、咲き乱れる花のように優しく。 やがて、夜のとばりが、街を包み込む。 また、明日、明るい太陽が光り輝くように、 わたしも、輝いていたいと思う。 そして、それは自分次第だね。
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